建築政策問題の研修に参加!
第16回全国建設政策研究・交流集会 研修報告書
11月29日・30日 静岡熱海にて
安全・安心、元気なまちづくりへ!
~住民と建設産業の共同で公正なルール作りと地域再生を~
新政権の建築産業への認識(主催者あいさつから)
新政権のもと前原大臣は建築業者・企業数が多すぎるという認識で『現在51万社あるが20万社でも多い』と発言している。のこり30万社は転業せよということであり、長年、専門業として力をつけて生ききた労働者をなんと思っているのか!という怒りを覚える。
河川敷で灯油をかぶって死んだ建設労働者の仲間がいる状況。
記念講演 京都大学 教授 岡田知弘
「経済危機の打開と地域再生」
● 開発が本当に地域を豊かにするものだろうか?
そのことを研究している。(例えばダム・合併・道州制など)
100年に一度の経済危機と言われてきた・・派遣村、反貧困運動が広がっている状況。(高知には反貧困の組織はまだ出来ていない)
アメリカではオバマ大統領が誕生し、日本では政権交代があった。今、まさに渦の中で見えにくいが歴史の大きな流れの中にある
住み続けられる地域が求められている。
● どこに視点を置いてみるのか?
地域を大切にすると言うこと。1980年代にグローバル化が進み、大規模開発(日米合意が交わされ当時の前川レポートでは630兆円が投入された)や自動車産業・電気製品の生産拠点が国外(中国など)へ移され始めた。
今まで工場があった地域はどうやって生きていけばいいのか?国が生存権を保障していくとことが求められるが、現実は誰が責任をもっているのかみえない。
元々、地域とは?生身の人間が生活する場である。特定の自然条件の中で生きている「人間の生活の領域」(単位:小学校区とか)
● 経済のグローバル化の中でその地域を誰が守るのか?
経済活動は人間が生きるうえではなくてはならない問題(住宅⇒森⇒部材⇒家=物質代謝)であるが、地域を誰が守るか期待できないのが実情。例えば、国籍企業問題では自動車(大企業)の50%が外国でうれているように海外であろうが売れればいいという考え。スタンスが地域ではないこと。
しかし、企業の99%が中小企業や農家などであり、お互い住めるしくみ作りが重要。
● 地域での建設業の役割
建設業(「建造環境」)について、D・ハーヴィイが資本論にでてくるが、生産・維持する土木建築業の重要性。土地の結びつきが環境を作っていくと言う話。都市や農村の景観についても出てくる。
建造環境が乱れてくると人が住めない、住まない領域が広がっていく。
しかし、100年に一度の経済危機というが100年前にこんなことはなかった。科学性がないことが言えるのに、かつてないから、かつてないほどのお金(税金)投入を目的として考えるのはおかしい。100年に一度論に潜む問題。
繰り返しになるが、政治が行った構造改革による恐慌であるといえる。実際に労働者の賃金を激減させワーキングプアを増やした。
● 以下の問題点と対応
① 96年に橋本構造改革からのグローバル国家は破綻し、地域経済、持続性まで失った問題。地域で生活できる質をあげて行くことが大事である。
② 食料、エネルギー危機についての輸入率はOECD国の内で世界第1位。画他国では太陽光エネルギーを買い取りするなど雇用を生み出している。
③ 自殺問題では98年からぐっと件数が上がっている。日本の人口の10倍の中国とほぼ同じ自殺件数。また、30代など若い人、青年層に及んでいる。
生活保護制度も機能していない。
★ 地方自治体レベルでの産業政策を住民生活の向上に直接つながるものに
グローバル論と反して中小企業振興基本条例など必要。国の政権が変ったから地域が再生するか?と言えば違う。新政権の行っている「事業仕分け」でも小泉構造改革推進のブレーンの人や財務省の人が書いたものでやっている。もっとメス入れるところがある・・国民の声こそが変ることの大きな力、チャンスとなってくる。戻ることをさせない取り組みが必要になってくる。その上で、それぞれの地域経済が再生の努力をしないと再生しない。
内需拡大ということでは一部の企業応援ではいけない。ひとりひとりの生活が良くなる仕組みが雇用を生み出すことになる。
● 「中小企業憲章」国会で採択の可能性と地方での広がり
国においても憲章の制度化の機運が高まっている。EU諸国でも同じような議論があった。EUは中小企業憲章かでき、教育や福祉においても作られている。
この「中小企業憲章」は自治体レベルで議論も深めたりすることが望ましい。
法=『地方公共団体は基本理念にのっとり、中小企業に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団の区域の自然的経済的社会的諸条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する』(中小企業基本法第6条)
例えば、企業誘致の見直しなど。(今の事業のレベルを上げる視点の取り組み)また、新中小企業法6条の実施する責務をはたす条件は自然的にも社会的にもある。
地域貢献を大企業に求める:イオンなど。情報公開について千葉県の条例(2007年)では教育や福祉にも当てはめるとしている事例。
2005年以降、中小企業振興基本条例が広がって現在25の自治体で制定されています。
特定の中小業者の保護策ではないことや自治体の責務だけではなく、中小企業、大企業、大学、住民の役割を明確化するなど条例の中身の水準も高いところもでてきている。
世界の競争に入れば大いに負けることは明白。同じもを作っている限り、価格競争ばかりになる。
違うものをつければ交換できると考えれば、世界の中の日本としも共存できるのではないか。投資したものが地域に戻ってくる仕組みがあればいい事で、海外進出(外需)がだめといっているのではない。
● 建築更新が出来なければ都市はこわれる
建築更新、いわゆる維持修繕などが行われなければ安全や・景観が損なわれる。例えば学校や橋梁など公共施設の耐震化や適切な修繕。また農業や林業にも手を入れることが大事である。地域の実態を知る、宝物を発見することで建築産業も都市で共存できる。
学校などの公共施設は県内産で資源循環を図ることも・・。木質ペレットの灰を有機農園へ再利用・・。
今こそ「地域学」が必要だと先生は講演されました。
● 公契約条例
千葉県野田市が公契約条例を制定した。野田市長の意見として、本来国の責任が大きいことで、国の取り組みも求めていくのと、合わせて他都市にも広げていくことが大事だと考えている。と紹介された。他産業と結び付けていくことの課題もある。
分科会「賃金」
「賃金」をテーマにした分科会に参加しました。中でも「公契約条例」についての質疑が多く交わされました。
今、賃金を上げるなんていう事に誰もが絶望を感じているという。本当はどうなのか?
建築分野もまともな産業として発展していかなければならない問題ととらえること。
市場のルールの中で動いているが、サービスや労働には値がついているがしかし、建築産業には価格のルールがないに等しい。適正な価格がないといけないのに、「何がまともかが分からない」という現状。買う側の認識が変ることがいると思うが・・・例えば労働者の賃金を含め雇用内容までチェックすることができる公契約条例などが制度として必要になってくる。
● 発注の際の適正価格とは?
予定価格の積算において二省協定を参考にしているところが多いと思うが、縛れるものではないのが現状。地域の最低賃金が守られていれば良いということでは生活保護基準以下となるケースもある。しかし、公契約条例で設けられた賃金基準を雇用者側が払えない、払うとつぶれるということでは問題で、払えるような適正な予定価格の設定が必要になる。
国における「事業仕分け」でも安ければいいという流れであり、価格(賃金も含め)に対する認識を高めることが求められている。
● 野田市の公契約条例
公契約条例の制定運動をしてきた、千葉土建から報告がありました。
平成22年4月から運用
*当初、建築分野を対象に考えていたようではない。(アウトソーシングのため?)
建築土木においては総合評価方式だけだった。
野田市の市長の見解、『本来国がやるべき問題だが市として出来るだけ取り組み、国に働きかけたい』といいう思いがあったよう。
制定された条例がいいといえるものではなく、いくつかの課題があることも報告された。運用を前に課題に対する議論が重ねられているという。
① 対象範囲をどうするのか?(建築だけか、教育福祉分野のアウトソーシングも含むのか?)
② 適用労働者の範囲をどうするのか?(ひとり親方で請負っている労働者はどうするのか?=労働組合法の定義からいうと必要である)
③ 賃金の最低額をどう決めるか?(最賃からどの水準へあげるか?)
④ 公共工事の適正な予定価格の設定(野田市は二省協定の8掛けで設定)
⑤ 公契約条例のもと下請け契約の適正な運用にするためには
⑥ 第三者機関のチェックのあり方(今ある審査会との関係は?)
● ドイツの公契約法
EUドイツでは平成21年3月から公契約法が改正され、新ガイドラインができました。発注の際、労働者を守ること「公共事業委託法における社会的要請への配慮」がもうけられました。ドイツの大臣はすべての人には尊厳があるということの上に議論を進めたという。
社会的、環境的とはどのような基準とプロセスをいうのかが明確でなければならない。
日本でも平成21年から施行されている公共サービス基本法の11条では「国・地方公共団体は公共工事の労働環境の整備をする」ことが定められている。しかし、この法はサービスであって建築は入っていない。
● 現場の声
*公契約条例が出来た野田市では二省協定の8掛けで賃金設定をしているが、そうなると交通誘導員の実賃金が下がってしまうおそれもあるという。
*設計変更に伴う増額が変更計画に見合っていない実態もある自治体。
*昔は職員が図面を書いて積算していたが、今はコンサルタントに委託するケースがほとんどで現場を知らないことで、現場の実態とずれた図面が出てきている。元々の計画のずれが分からないまま想定される変更事案も書かれてなければ変更すらできないケースがおきている。
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