武道必修化の危険性
武道必修化を考える県民集会が開かれる
会場から「延期してほしい」声
国の指導要領改定に伴い、中学校すべてで柔道・剣道・すもうを選択させ男女共に義務化する『武道必修化』がこの四月から実施される予定になっています。この問題について考える集会が2月5日に開かれました。
パネリストとして柔道協会、相撲協会に所属している教員、保健体育教師、保護者が参加しました。
高い死亡率、事故が後たたず!
柔道の死亡事故がどの他のスポーツと比べても10倍以上あると名古屋大学の内田教授が調査をしています。1983年から2010年の28年間に全国で114人が死亡。中学生が39人高校生が75人で授業中が14人。特に初心者となる1年生に集中しているといいます。死亡に至らなくても後遺症が残る事故は275件も確認されています。
私も学生時代に柔道していて、いろんな怪我をしました。 捻挫、打撲、膝のじん帯損傷、救急車で運ばれたケースもありました。 受身や技術が一定ある選手クラスでも怪我はつきものでした。
名古屋大学の教授の言うとおり、体力や知識が不十分な初心者ほど事故の発生率は高くなります。
今、なぜ武道3種を必修化するのか
4年前、当時の自民党安陪首相のときに計画されたものです。国の目的は日本古来の伝統文化や礼儀を学ぶためとしています。指導要領(教える中身、基準)では「それぞれ基本の『技』を使って相手を投げたり、抑えたり攻防を展開する」と記述されていますが、年間15時間ほどしかない中で教育として実施出来るのか、体育の教師といえども教える側に経験が無いがいいのか、などいろんな心配が浮き彫りになっています。
専門的な教師、市内に居ない
パネリストで県柔道連盟事務長でもある体育の先生の報告では、柔道では市内中学校で柔道専門家として教えられる体育教師はゼロ。全県見ても8名程度だといいます。
危険を回避できない現場!
どんなに施設的に整備が整ったとしても、現場で教える教師に専門性が無ければ危険を回避することはできません。市内でも教員向けの研修はまだこれからの段階です。4月から専門でないが武道を教えなければならないパネリストの保健体育の先生は「武道の本質から離れるしかない」と言います。お遊び程度しかできないのが実情です。武道を必修化とするには程遠い現状です。
(財)全日本柔道連盟は安全指導の指針を2011年改定し、これ以上の事故を増やさない対策を行っています。その中で「指導者の責任と安全配義務」という項がトップにあり、『柔道の指導者は危険性が高いという運動特性を把握し、危険を予期し回避することによって怪我や事故防止に万全を期すことが求められる』としています。市内に専門家といえる指導者がいないままでの必修化は実施を延期するべきと思います。
外部指導員に警察官
専門性や安全性を少しでも高める為として、外部指導員に来てもらう協定を国が結んでいますが、その相手は警察です。 確かに警察官は柔剣道を身につけていますから、専門家でない体育の先生の現場には居てもらえれば、いないよりはいいのかもしれませんが、本来の姿、対応ではないと思います。
教科としての必修化なわけですから、専門の体育の教員こそ増やすことをしなければならないと思います。
教員免許を持たない外部の方は子ども達に責任はなく、直接指導はできないわけです。
簡単に外部指導員がいればいいという考えは見直すべきです。
実際、教員を採用している地方自治体の役割も問われます。専門の体育教員を配置できる計画を早急に示すべきです。
ある県では、柔道の専門家を早く作ればいいという、浅はかな考えで数日で研修を受けた教員が黒帯(有段者)
になれるような事態も起きています。昇段を認める柔道協会の関わりも心配しますが・・・。
柔道生活から多くのものを学んできた私にとって、武道の発展を心から願っています。
柔道の精神は肉体的に強くなればいいだとか、技術の向上で成績があがればいいというものではありません。
「精力善用」「自他共栄」が柔道では基本精神として大事にされ、教育される武道です。
「精力善用」とは自らの心身の力を全身全霊かけて、社会貢献のためにもといることとされ、「自他共栄」は相手を尊敬、敬い感謝の気持ちをもって他者と共に発展していくこととされています。
『礼に始まり礼に終わる』姿は形になった一つです。
しかし、その本質を簡単に教えられると思って「武道必修化」を計画してきた国、政治に憤りを感じます。
子どもへの危険性に対する認識は甘すぎる!
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