就学費の全額返還処分の撤回を求めて質問
生保世帯から就学費を全額返還させた問題
問題の事例は生活保護世帯の母子家庭で、お子さんは2人、高校生と中学生です。
高校へ進学をした長男に給付されている「高等学校等就学費」の1ヵ月10,600円では、必要となる制服代やクラブ活動費、修学旅行代、塾代、テキスト代などが賄えないということで、母親は子どもとも相談して、奨学金を受けたいと、入学前に福祉課・担当者に相談していました。しかし、その時点で、具体的な制度についての説明はなかったとの事です。
その後、8月になって、福祉課の担当者は、就学費10,600円と県の貸付奨学金18,000円のどちらかを選択するよう、母親に伝えています。
福祉事務所は、当然の様に、県の貸付奨学金を借りたからと、就学費が過支給であることを理由にして全額返還の方針を決定しました。4月・5月・6月分については「生活保護法第63条による返還金納付命令」を通知、全額返還処分とし、7月分以降については8月18日付けの保護決定通知により保護費の減額を行うとしました。
つまり、福祉事務所は、県の貸付奨学金を借りると、就学費は返してもらうという方針であるということです。
福祉課が就学費と貸付奨学金を選択させた指導は明らかに問題で、違法だと思われます。
生活保護担当の職員が手引き書としている「生活保護手帳2015」の中では、就学費と貸付金の関係について考え方が示されています。どう書かれているかというと「・・高等学校等就学費で賄いきれない経費が必要な場合については当該経費にあてられる必要最小限度の額に貸付額を変更し、その上で高等学校等就学費を給付することとされたい」と書かれています。
また、高知県のホームページでも、高等学校等就学費の取り扱いについて、奨学金を利用する場合として、次のように明記さています。「高等学校等就学費は奨学金等の貸付を受けなくても高等学校へ就学が可能となるよう生活保護で給付されるものです。なお、高等学校等就学費の給付対象外となる経費や基準額の範囲で、まかなえきれない経費については奨学金等の貸付金により、まかなうことは可能です。」とあります。
就学費と貸付奨学金は併給できることは明らかです。
☆ どちらかを選択させたこと ☆必要経費について聞き取りを行っていない この点からも今回の処分は撤回するべきではないかと質問しました。
市議会での答弁
市=「返還処分は取り消ししない」
「市の処分が明らかに誤りであると断定できませんのでただちに取り消しを行うことはできません」
「聞き取りを行ったうえで再度の判断をいたしますまでのその期間につきましては返還を求めない対応する」
問題点①
就学費と貸付奨学金のどちらかを選択するよう指導している点は、「どちらかを選ぶといった指導はない」と部長が答弁したが、2問で担当者みずからが9月10日に選択させた事実を認めたことを指摘すると、「あくまでも生活保護手帳の趣旨(第8の59)に従った」、「対応をどうするか、部内で協議して返還を求めると判断した」と答弁。これは福祉事務所が協議した結果、就学費は全額返還してもらうことを意味する、つまり、併給できない、選択させたことを示している。また、「(併給できる)制度について理解が十分でなかった認識している」とも答えた。福祉事務所の考えか方、方針が併給できないことであったことは明らか。
しかし、驚くのは、担当課が選択の指導をしたと9月10日に認めているにもかかわらず、答弁では「どちらか選ぶといった指導はしていない」と言い切っている。 おかしな答弁だ。協議の結果、選択するものと方針を判断したのは福祉事務所、市である。 それに従った担当課や担当職員の指導や発言を無かったことにしている。今日の質問戦で一番の怒りを感じた!
問題点②
返還命令や保護費の減額という行政処分を行うに不可欠な「聞き取り」をしていない点については部長も市長「ヒアリングが不十分だった、反省している」と答弁、その上で「充分な聞き取りを行い、再度の判断をいたしますまでの期間につきましては、返還を求めない対応としてまいりたい」答えました。繰り返し、今の段階では行政処分の取り消しはしない、ヒアリングをしてから判断したいとしているが、そもそも、返還がいるのか、いらいのか、どれぐらい必要経費がかかるのかという調査があって処分は決まるものだが、一度も聞き取りがされないままである。 これは生活保護法第56条「正当な理由」に反することである。行政処分の判断過程が不適切であったならば、処分の撤回は妥当な判断だと思うが、判断過程の重要性を市は認識していないと思う。
処分取り消しの根拠
①福島地裁の裁決から
生保世帯の高校生が受け取った給付型奨学金を福島市が収入とみなして保護費を減額した問題で県に不服審査請求その後、再審査請求が国に出され、結果、国は市の「処分の取り消し」と裁決しました。理由は「聞き取りをせず、保護費を減額させたこと」としている。
②厚生労働省 援護局 保護課 「高等学校等就学費の運用にあたっての留意事項」(H18年)
香川県が高等学校等就学費と奨学金は併給できないとしていた問題(奨学金の辞退を求める「お知らせ」をしていた)があかるみになる事がおこり、国が改めて出した見解文。
内容は「・・就学資金の貸付金と高等学校等就学費との適用関係において、一部の自治体において誤った取り扱いがなされていたところである。就学資金の貸付と高等学校等就学費の給付については、一律にどちらか一方のみを適用することではなく、高等学校等就学費の支給対象外となる経費や基準額の範囲内で賄いきれない経費には貸付金をもって充てることもできるものであり、生活保護においても高等学校等就学費を併せて支給するものである。・・」とある。
☆「処分の取り消し」にあたる点
① どちらかを選択させたことと(選択の指導の事実と就学費の方の全額返還という事実)
② 全額返還処分とする理由の根拠に必要不可欠である聞き取り調査をしていない点(生活保護法第56条違反にあたる)を認めておきながら、処分の撤回はしないという市の姿勢は問題である。本来、やるべき手続きを適正にしていない行政処分がまかり通ることはおかしい。
☆これからの対応
◎ 不服審査請求が9月24日県へ出されたが、その結果がまたれる。と同時に市は議会答弁で約束した聞き取りを行い、現行処分の是非について見直し、早急に結果を示す必要がある。また、10月4日からの保護費にはきちんと就学費が給付されているかも問われる。
◎ 現状が変わらないまま、もし、県が不服審査請求を却下した場合は、国に再審査請求をする必要がある。なぜか、福島市の問題も国に再審査請求して、「処分の取り消し」が認められたから。
◎ 福島地裁での裁決の処分取り下げ理由と高知市の状況が同じであることからも、高知市が処分の撤回をしない限り、法的争いがつづくと思われる。
妙なことを言われた。不服審査請求をすると、結果がでるまで、市が質問に応えられなくなるとの意見だが。 そんなことはありえない。 不服審査請求と言うのは、行政が行政を審査、チェックし見解を出すもので、議会で問われれば市の見解はいう必要があるものだ。 裁判中とはわけがちがうものだ。 不服審査請求は当事者の権利である。 当事者からすれば大きな不利益を受けている。給付されるべき就学費が不適切な市の処分によって全額返還させられているのだから、たまらない! 今後、行うとするヒアリング調査の期間は返還は求めないと市は言うが、当たり前だ。 高校生本人が市長あてに手紙を書いてくれたが「将来の夢は医者になることです。生き甲斐は野球です。奨学金や教育費を減らされたらこまります。貧乏な家庭の子どもは夢も生き甲斐も持つことができないのでしょうか」と。 市の不適切な返還処分によって、がんばっている子どもがこのような思いをしているのです。 このような誤りを認められないようで、貧困の連鎖を防ぐことはできるのか、本気だろうかと、疑ってしまう。
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