市議会論戦④ 公共調達条例
公共事業の現場労働者の処遇改善を求めて!
部長答弁 『現状では、効果は少ない』
労働者賃金下限額720円は低すぎです。 10月から公共調達条例が施行された。
条例には工事契約の場合「職種ごと公共工事設計労務単価を基準とする」とあるのに、一律720円としているのは、現場労働者の低賃金解消という条例の趣旨に反する。工事現場の最低賃金の実態は750円(未熟錬工)であり、それおも下回る額です。効果がどこにあるのかと質問。部長は「効果を発揮する場面はすくない」と。また具体的に賃金効果がある職種がないことも認めました。
これからの改善に期待が強まる
改善点の多い条例であることが明らかになりましたが、大事な条例です。賃金など基準の改善に向けて本腰を入れた取組みが必要です。公共事業の現場の皆さんの声をお寄せください。
以下、質問内容
1、公共調達条例にかかわって質問します。
杭打ち工事の偽装問題が民間建物だけでなく公共施設にも広がる、深刻な問題が起きています。
根本には建物の安全性が企業任せになり、国や自治体が責任を負わない仕組みであることが、調査が進む中で明らかになってきました。今回の事件も元請けは三井住友建設ですが、現場は3次下請け業者で「多重下請け」構造となっており、責任が下へ下へと転嫁されていました。人件費を含み徹底したコスト削減と厳しい工期設定を求められ、それがデーター偽装になったと指摘されています。安全性への信頼を取り戻すために、行政のかかわり、具体的手立てが改めて求められていますが、最も改善が必要な点は「多重下請け」構造を是正することです。つまり、低価格・低労働条件、利益を上げるための無理な工期短縮といった問題を改善する手立てをうつことです。建築業界自身が取り組むべきものですが、公共事業にかかわる事からも、行政側の 責任も当然に問われてきます。
市も公共事業の品質確保や労働者の処遇改善を進める取組みとして10月から「高知市公共調達条例」をスタートさせました。
9月議会でも質問をいたしましたが、中途半端に終わりましたので、今議会では、条例に照らしてどうか、効果があるのか、の点で市の明確な考え方と改善策を示していただきたいと思います。
今回、設定された基準は、予定価格1億5千万円以上の工事の労働者報酬下限額を720円にすること。と、ひとり親方の場合は設計労務単価の80%とすること。 また、予定価格500万円以上の委託業務や指定管理事業も、労働者報酬下限額を720円とすることです。
対象範囲は市の公共事業のごく一部ですが、労働者の賃金を確保し、公共サービスの質を担保していく意味では条例制定は大きな前進だと思います。
しかし、この労働者下限額720円という設定基準が条例に照らして適正か、条例の趣旨にそったものなのか、この点では言えば問題は大きく2つあります。
まず1つ目は、条例7条の2では、工事契約の場合「市が工事費の積算に用いる 公共工事設計労務単価において、職種ごとの単価として定められた額とする」としていますが、実際はひとり親方のみが「設計労務単価」を基準とした目安で、その他すべての職種は下限額720円とされている問題点です。
二つ目は、清掃業務等の委託契約の場合も条例規定では「生活保護法第8条第1項に規定する厚生労働大臣の定める基準において本市に適用される額」とされていますが、実際は生活保護法で認められている住宅扶助分は除かれ「住宅費なし」の 下限額720円としている問題点です。
これらが条例にてらして、問題であり、審議のやり直しが必要だと9月議会で 改善を求めましたが、総務部の答弁は「条例に規定している額、つまり公共工事設計労務単価や生活保護基準額と『その他の事情』を勘案して定めるものとされており、・・・額の設定が条例の趣旨とは違うものになっているとは考えていません」とのことでした。
『その他の事情』を勘案したから、この設定基準になったとしていますが、『その他の事情』を勘案したとしても、条例の規定や趣旨を下回る基準となることは、通常は考えられないことです。
◎ どんな事情が勘案されたのか、総務部長にお聞きします。
どう見ても条例の趣旨より、『その他の事情』が優先されたとしか、いい言いようがありません。
◎ そもそも『その他の事情』が優先されようがされまいが、条例の規定を下回る基準ができることは、おかしいと思わないのか、総務部長に認識をお聞きします。
「条例」そのものの意義が、問われてくる問題です。
◎ 条例で「設計労務単価」をベースにするとした、意義について、改めて総務部長にお聞きします。
国土交通省は、建設業に従事する若年技能者が極端に減少していることに危機感を抱き、若年者が建設業への入職を回避する最大の要因が「賃金の低さ」にあるとして、2013年度から2015年度まで3年間、公共工事設計労務単価を連続的に引き上げました(3年間の引上げ率、単純平均で28.5%)。引き上げに伴い、国は「技能労働者への適切な賃金水準の確保について」と題する通達を発行していますし、2014年には、成立した改正「公共工事品質確保法」においても、品質確保の上では工事の担い手の確保・育成が最重要課題として、発注者・受注者それぞれの責務を明確にしています。
公共工事設計労務単価は発注側の積算根拠であり、また適切な賃金水準の根拠となっていることからも、尊重される意義は明らかです。単価の引き上げ状況からみても、設定基準に活かされるべき重要な目安なわけです。10月から実施され、出来たばかりの設定基準とはいえ、現場労働者にとっては生活にかかわってくる重大な問題です。建設業界にとっても担い手確保にかかわる大事な問題でもあるはずです。
では、現場の実態はどうか、公共工事の現場には特殊作業員や塗装工、配管工、大工さんや交通誘導員など、あらゆる技術者が存在します。
公共工事の設計労務単価の中で一番単価が低いのは交通警備員で、1日の賃金の目安は8300円となっています。この交通誘導員の場合、下限額720円というのは設計労務単価の70%以下という水準です。現在、賃金水準が低い職種といわれる塗装工も設計労務単価では1日18,000円です。時給にすると2,250円ですから、下限額720円というのは設計労務単価の32%程度となります。
また市が調査した「賃金アンケート」でも未熟練工の最低の賃金の額でさえ750円です。それにも関らず、ひとり親方を除き、すべて一律720円という水準で、
どうして低賃金の問題が改善につながるといえるのか。疑問です。
◎ 工事契約の場合、今回の設定基準による効果はどこにあるのか、総務部長にお聞きします。
効果があるとは言えないのです。
全国の取り組み状況にも学ぶ必要があると思います。
例えば、高知市は対象工事を1億5千万円からとしていますが、他都市では4千万円や1億円からとして、対象工事割合を広げ多くの労働者に恩恵があるよう努力しています。(高知市の額を越えているのは足立区の1億8千万円だけ)また、委託事業の下限額についても条例で生活保護法を採用している自治体は川崎市、多摩市、厚木市とありますが、高知市の様に「住宅費なし」という所はゼロです。どこも設計労務単価がベースであり、その上で、多くの自治体は、掛率90%としています。高知市は非常に低い水準であることが明らかです。
7月22日に開かれた「高知市公共調達審議会」の議論でも「全国と比べて、突出して額的に低い」という意見や「条例の効果というのはどこに見いだすのか、という話が必ず出てくる」という声、「10月1日から施行が決まっているので、やむなく 了承」という意見が出されていました。
今回の設定基準が十分いいという様な意見はほとんどなく、議論する時間や材料が少ない中で、急いで出されたものだと言うことが浮き彫りになる審議会でした。
◎ 本来は条例で示されている通り、下限額の設定の基礎は職種ごとの「設計労務単価」とし、その割合も全国平均90%台に引き上げていく、丁寧な議論こそ必要と思います。また、生活保護基準の住宅扶助を含めた設定へも見直す必要があると思います。その点の認識と、今後、審議会に諮問する考えはないのか、市長にお聞きします
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