12月市議会 個人質
政治、行政は「弱者への態度」が問われる!
*政治姿勢 税制調査会の特別委員として市長の国の税等への認識
*生活保護行政 職業訓練受講給付金と就労支援
*教育 不登校支援とSSWの処遇改善(非正規問題)
*農業 農福連携、農業振興(償却資産の課税・燃油高騰)
1、市長の政治姿勢
11月12日、市長は内閣府の税制調査会、特別委員に任命されましたが、この会において、市長がどの様な考えのもと意見を述べられるか、その政治姿勢についてお聞きします。
今回の税制調査会から委員に諮問されている議題はG20でも合意された国際的な課税ルールについてです。背景にはグローバル経済やデジタル化の中で、物理的拠点がない為に課税出来ない問題や、いわゆるパナマ文書で明らかになった脱税や租税回避などが国際問題となり、法人税の引き下げ競争に歯止めをかける必要性があると国際世論が高まった為です。2023年からの実施に向け、世界が足並みを揃えて、課税対象基準や最低税率(15%)を決め、各国の法改正のもと運用していく流れになっています。
これは、当然の流れであり、国際的に課税の枠組みが議論されることは大事なことですが、これにとどまらず、日本国内の税制問題も審議していくことになります。
市長はその特別委員として発言権を持つわけですが、政府の税制の在り方に対し、どう考えているのか。また、誰の立場で発言し議論されていくのかが問われます。その点でいくつか質問したいと思います。
岸田首相は総裁選挙の時に、こう述べています。
「小泉政権以降の新自由主義的政策は我が国の経済に成長をもたらす一方で、持てるものと持たざる者の格差が広がった、成長だけでは人は幸せになれない、令和版所得倍増のための成長と分配が必要で、だから新自由主義から転換し、新しい資本主義を目指す」と発言しました。
本来、新自由主義からの転換と言うならば、新自由主義的政策の目玉としてきた「アベノミクス」に対する反省が、まずあるべきではないでしょうか。
1%の大企業と富裕層には大規模な減税を行い、一方で99%の中小企業と労働者には消費税を含め、増税の連続で負担を強いてきましたが、首相は反省どころか、「経済成長させた」とアベノミクスを称賛しています。
さらに、12月6日の首相の所信表明で明らかになりましたが「敵基地攻撃能力」の保有のもと軍事力を強化すると発言し、補正予算に7,700億円もの軍事予算の追加を盛り込みました。
一機180億円する戦闘機をいくつも買うことなど、この追加予算で日本の軍事費は過去最大の6兆円を超します。
新年度予算の編成方針でもGDP比で1%としてきた軍事費を2%へ引き上げる姿勢です。
2019年度時点の国防予算を各国の対税収比で見ると、アメリカ18.2%、中国7.5%、イギリス7.5%、フランス5.7%、日本は5.4%、オランダ4.9%。日本は上位6位に位置しています。
アメリカを除くNATO加盟国の平均は4.7%であり、すでに日本は軍事大国と言われても仕方がありません。
その一方で、社会保障では高齢化を踏まえず、必要な予算を抑制し、75歳以上の医療費の窓口負担2倍化や年金の減額など負担増が計画されています。
また、致命的に酷いは労働法制の改悪で非正規雇用を増やし、結果、全労働者の約4割が非正規、特にコロナの中で非正規労働者は真っ先に仕事を失った層でもあり、その多くが女性や若者、年金の少ない高齢者たちですが、政権与党が先日、発表した税制大綱では、賃上げ優遇税制を準備していますが、対象は一部であり、それも2年間の限定的なもので、根本的な解決策とは言えず、底なしの貧困と格差を広げてきたことへの反省には見えません。
首相自身、指摘していますが、どうして、持てるものと持たざる者の格差がこれほど広がったのか。原因は明らかです。日本の税制においては、法人の収入が1億円を超えると、政府による大規模な減税措置があり、実質の税負担は平均約12%になります。一方で収入が1億円未満の中小企業の実質税負担は約19%です。つまり、法人税の実態は大企業と中小企業とでは2倍近くもの負担の格差となっています。
そもそも、日本の法人実効税率は2003年から17年間に段階的に37%から29%へ引き下げられました。その間、大企業の内部留保は約1.4倍450兆円規模に膨らみました。一方でアベノミクス9年間の内に消費税は5%から10%に2度も引き上げられました。
この税制のゆがみが、持てるものと持たざるものをつくっています。
今回の内閣府の税制調査会で議題になっている国際的な課税の基本的な考え方も「負担が公平であること」、「法人税の引き下げ競争の是正」、「最低税率の導入(15%)」です。
この点を比較しても国内の税制の実態が、いかに矛盾し不公平なのかがわかります。
内閣府の税制調査会は、政令の規定・第33条で、1、内閣総理大臣の諮問に応じて租税制度に関する基本的事項を調査審議すること。2、前号の諮問に関連する事項に関し内閣総理大臣に意見を述べること、とされ、政権与党の税制に対し、首相に対し意見を出せる所です。
委員は20名、特別委員は26名。市長は特別委員であり、その中で自治体関係者はたった2名です。市長の発言や姿勢が、地方の実情をしっかりと反映したものになるのか、高知市民、県民だけでなく、多くの地方自治体からも注目されています。
最大のポイントは、国民を犠牲にせず「成長と分配」の財源をどう捻出するのか、その基盤にどんな改革が必要なのか、その考え方が内閣府の税制調査会では問われてきます。
・政府が今考えるべき見直しの本丸は、お金のある所から徴収し、憲法25条の生存権を保障する、福祉国家としての責任を果たすことではないでしょうか。市長の認識を伺います。
大企業への行き過ぎた法人税減税を見直すことで8兆円、富裕層への課税で3兆円、富裕層の為替取引税の創設で3兆円、政党助成金の廃止320億円、軍事費とリニアなどの大型開発の削減で5兆円、これだけでも、合計すれば年間19兆円を超します。これを活かせば、消費税に頼ることなく「分配と成長」の雇用と経済につなげる事が出来ると思います。
書画カメラ:国費を支える税の内訳、消費税が所得税や法人税よりも多くなっています。
・政府は逆進性の強い消費税に頼る税制を続けてきましたが、この考え方や今の財源構成の現状は改めるべきと思いますが、市長の認識をお伺いします。
・現在、政府はコロナ対策として、土地や建物の固定資産税の軽減や引上げの据え置きなどの特例措置を行っていますが、それを打ち切ろうとしています。コロナによる経済への打撃、市民所得の落込みを見れば、特例措置は住宅地も延長すべきです。確かに、固定資産税は地方財源ではありますが、国はしわ寄せが地方に行かないよう地方財源への支援にこそ配慮する必要があると思います。市長の見解をお聞きします。
2、生活保護行政における、就労支援について
厚生労働省が対象要件の緩和をした「職業訓練受講給付金の特例措置」制度の活用について、いくつか伺います。この制度は働こうとする全ての人が対象で、生活保護受給者も利用できます。通常、職業訓練を受ける場合、テキスト代は自己負担ですが、訓練代は無料です。
加えて月10万円の生活給付金が受けられる制度となっています。
産業政策課を通し労働局にお聞きをしますと、利用状況は2020年度で受給者実員数470名です。就職率は高知県全体での数値ですが、2019年度はハローワーク内での訓練で約86%、委託先訓練では約80%で、高い割合で就職につながっています。活用をさらに、進めて欲しいのですが、
今回、問いたいのは、生活保護受給者が自立のため受けた職業訓練受講給付金(月10万円)が生活保護費を上回るとして、市の福祉事務所から全額返還を求められたという問題です。
相談の内容は、生活保護を受給中の青年がこの制度を利用し、自立訓練を受けたけれど、給付金10万円は当初、全額返還を求められました。その後、本人が指摘をした結果、部内協議をへて、交通費などの必要経費は一部、収入認定しない事になり、2万5千円が控除されました。
・厚生労働省の「職業訓練受講給付金」特例措置事業を活用している生活保護受給者の方は何人いるのか。また、訓練受講給付金の全額返還を求めた後に協議した結果、「控除」を認めた理由について健康福祉部長の見解をお聞きします。
本来、職業訓練制度の給付金は「控除」ができると考えます。生活保護手帳では、収入認定しない取り扱いについて、基本的には自立更生のための用途に供される場合は、収入認定しないケースがあると書いてあります。また、就労収入と認められれば、控除があります。
・厚生労働省の自立、就労事業として給付される「職業訓練受講給付金」も「控除」できる対象です。当事者の権利として「控除」については明確に周知するべきです。控除の範囲とは何かも含めて、今後の取り扱いについて、健康福祉部長にお聞きします。
3、不登校支援と専門職の処遇改善、民間団体との連携強化について
まず、食支援ネットや子ども食堂との連携による不登校支援について伺います。
引きこもりや不登校の支援を進める地域のパートナーとして頑張っているのが、子ども食堂さんやフードバンクなど食支援ネットの皆さんです。
実際、スクールソーシャルワーカーさんが子ども食堂と連携することで、お弁当や食材をもって家庭訪問することができるようになり、開けてくれなかった玄関や部屋のドアがあき、当事者の顔が見える、対話が出来るなどの効果があったと報告がされています。
改めて、子ども食堂など民間団体との連携が重要だとわかりましたが、
・増加している不登校児童、生徒の実態数と出現率、また子ども食堂との関係など、その支援の状況を教育長にお聞します。
*(2019:462名)書画カメラ:不登校児童生徒の推移、出現率
11月21日、食支援ネットこうちの設立記念の講演弁士として東京大学特任教授で、自らも子ども食堂の運営に、たずさわっている湯浅誠さんが話をしてくれましたが、その中で行政の関りについて、元総務省官僚の佐藤文俊氏が寄稿した文献『地方自治』の869号「これからの10年~地方分権と地方創生~」での発言が大事だと思ったので紹介します。
内容は「地域における世代を超えた交流の場へと、進化を見せる子ども食堂などは近年、目に見える広がりをみせている。このような動きは、自治の原点に立ち返るもの。地方自治体はこれらを行政の下請け、補完として便利につかうということではなく、地域づくりのパートナーとしてそれぞれが自主性、自律性を十分に発揮して活動できるような環境づくりに努めることを心がけるべきだろう。少なくとも地方自治体は、このような住民等の活動に敏感であってほしい。」と述べています。
子ども食堂は高知市でも6年前から始まり、現在30ヵ所以上に広がっています。
全国的には6年前は319ヵ所だったのが2020年には4960ヵ所に増え、実態も子どもだけでなく、高齢者も含め、多世代の交流の場になっています。市内の子ども食堂も子育て支援の場であり、また高齢者、障害者の居場所、誰も取り残さない地域づくりを実感する場になっています。
国民の認知度調査で、子ども食堂の認知度は84.4%、ポケモンの認知度が82%ですから、非常に高い認知度なのですが、実際に、子ども食堂に行った事がある方は、たった5%だと言います。
知っているけど、行ったことがない方がほとんどです。地方でも都市化、コンパクト化が進んでくる中で、公園や里山、空き地など子どもの遊び場は1000分の1に減っているという試算もあります。そういう中で、子ども食堂は、大事な居場所だと思います。
湯浅誠さんは「地域の保健室」だとも話してくれましたが、市は、子ども食堂や食支援ネットの活動にもっと積極的に敬意をもって関り、真に誰一人取り残さない社会づくりに力を入れて欲しいと思います。
・特に不登校対策を進める面では、地域の保健室の役割を果たしている子ども食堂さん達の運営上の悩みは、しっかり受け止め、運営の継続につながる、あらゆる支援を行って欲しいと思いますが、市のかかわり、現状は十分でしょうか、市長に認識をお聞きします。
次に不登校支援に関わり、スクールソーシャルワーカーさんの処遇改善について
現在、市にはスクールソーシャルワーカーさんが県費で15名、市の予算で1名、合計16名が各中学校区に配置され、1人で小学校と中学校を2校~6校担当していると言います。
苦しんでいる子ども達や保護者、学校との間に入り、相談の中には、病院や福祉関係の専門家との連携も取り、常に寄り添い、子どもの状況に合わせ、昼だけでなく夜も働いていると聞きます。
学校や家庭からも頼りにされており、その役割は非常に大きい存在、仕事です。
市長も議会初日に県市連携会議にふれ、「課題を抱える子どもを孤立させず、早期に発見して適切な支援につなげる為、学校現場やスクールソーシャルワーカー、児童福祉部門との連携を県市ともに強化していく提言があり、お互いに重要性を確認した所」だと報告されましたが、不登校が増え続けている高知市においては、人員が足りていないのではないか、処遇改善も急ぐ課題だと思います。
職務規定での身分はパートタイムで時給3,300円。高く見えますが、年間の勤務時間は482時間から801時間程度です。年間の勤務時間を給与にすると、年間482時間の場合で159万600円、801時間の場合は264万3,300円です。月額にすると約13万円から22万円程度となります。
これを高知市の会計年度任用職員の給与表で比較しますと、例えば、事務補助員の初任給は1-1号給で月額14万6千円。教育支援センター支援員は1-21号給で月額17万1,700円、子ども・子育て相談支援員は2-33号給で月額24万5,400円です。
現場の実態を踏まえれば、スクールソーシャルワーカーさんの給与や処遇の位置づけは、低いのではないでしょうか。
・県に対し現状15名の人員から増やす予算措置を求める事と同時に、切れ目ない支援を維持する為
市独自でも増員を検討するべきではないでしょうか。教育長のご所見をお聞きします。
・スクールソーシャルワーカーさんに掛け持ち労働を認め、パート扱いにするのではなく専門職として個々のケースに対応できるよう正規職員として位置づけるなどの処遇改善の必要があると思いますが、今後の処遇改善について、教育長の考えをお聞きします。
4、農業振興、農福連携の推進について
農業振興は人間生活の根幹に関わる重要なテーマです。
行政は農業者に対し、敬意をもって事業に取り組んで欲しいと思います。今年も農業委員会から高知市に対し、意見書が出されました。
中山間地域の人口減少と共に、農業の担い手の減少、温暖化による農作物や田畑への悪影響が広がる中で、国土と食料を守る役割をもつ農業に、最大限の配慮と支援を要請する内容となっていますが、今回、市はハウスや田植え機、トラクター、コンバインなどの償却資産への課税を来年4月から行うとの事です。この課税についてのお知らせがあったのは10月です。
12月1日の農業委員さんと市議会との意見交換会が鷹匠庁舎で開かれましたが、委員からは「課税が4月から始まる事をまだ多くの農業仲間は知らない」、「税金は払うが、収入は減る中で負担ばかり増え、もう潰れる」、「申告の締め切りが1月末なので間に合わない」との意見がありました。
税の公平性は理解できますが、温暖化、コロナ、燃油高騰など農家は大きな打撃を受けており、現状は支援こそ行い、生産者が潰れないように、行政が支える時ではないでしょうか。
・農業者が大打撃を受けているタイミングでの課税は配慮されるべきです。切実な農業者の声をどう受けとめているのか、また申告が間に合わないケースも想定されますが、市はどう対応していくのか、財務部長にお聞きします。
課税の公平性が進む一方で、農業者が廃業に追い込まれるような事があってはなりません。
燃油高騰への支援など国が補正予算に盛り込みましたが、改めて農業者への支援を求めます。
意見交換会では農業者の皆さんが、担い手確保の為に行ったアンケートの結果が報告され、農地やハウスの近くに家を確保したいとの声があり、空き家支援が担い手確保につながる事も見えてきました。
また、市内の遊休農地の実態は深刻です。2015年の調査では724筆、約37万㎡だったのが2020年には、2653筆、195万㎡に増えたと確認されています。
これは農地があっても生産できない、農業力が失われていく危機を現しています。
・厳しい中にある農業者の声に応える施策として、燃油高騰への支援や担い手確保のための空き家活用など生産者を守り、支える支援の拡充ができないか、農林水産部長の考えをお聞きします。
(総務省:原油価格高騰支援・特別交付税2分の1措置、岡山・米価下落に対する独自補助)
最後に、市が3年前から取り組んでいる農福連携について伺います。
11月9日、県が開催した、第1回・高知県農福連携会議に参加しました。
県は要綱を定め、障害や生きづらさを抱えた方々が、農業分野で就労できるよう支援し、県内で効果的な連携を進め、高知県の農業と福祉を発展させたいとしています。これはお互いの就労と収入づくりを進めるもので、県内では安芸市や高知市、いの町など18市町村に広がっています。
国と県も支援を始め、受入れ側と働く側、双方に補助制度が出来ました。
例えば、農業体験会を受入れてもらうと1万5千円の補助。ひきこもりや生活困窮者の方を受入れてもらうと受入れ側に1人1日5千円、利用者側には1人2時間ごと1,250円の補助があります。
県の連携会議では各自治体から報告があり、コーディネート役の配置や送迎問題、受入れ先探しなど、行政の苦労や課題も出されました。
安芸市では農福連携事業が移住に繋がっていると効果も報告されました。
市では「農福連携研究会」が設置されており、仕組み作りなどの検討がされてきましたが、農家と求職者をマッチング支援し国の補助や県の支援制度を活かすことが、今の体制で十分できるでしょうか。
・この間の農福連携の効果、また課題について、現状認識を健康福祉部長にお聞きします。
庁内での連携はもちろん、農家や相談者、補助制度の活用などをコーディネートし横軸になって本格的に取り組むには、専任の職員が必要だと思います。
誰一人取り残さない地域共生社会を実現させる上で、大事な役割を持つ事業であり、その為の環境整備は市長の責任でもあると思います。
・庁内にコーディネート役の職員を配置する事や係りの創設など、体制強化を進め、農福連携の発展、地域共生社会の発展につなげて欲しいと思いますが、市長の決意をお聞きします。
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