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2022.06.20

2022年6月 市議会個人質問原稿

1、国政に対する市長の政治姿勢

 ① 現在、急激な物価高騰が起き、家計は圧迫されています。
 
 その最中、岸田政権は何の躊躇もなく、平然と年金を引き下げました。消費税は下げず、年金は下げる、怒りでしかありませんが、市内に暮らす80代老夫婦は「貯えもないのに夫婦で年間約1万円も下がった、物価は上がりエアコンもガスも使うのが怖い」と話します。物が買えない、売れないという経済の疲弊、悪化している時に、日銀の黒田総裁は物価高騰について「家計の容認度も高まってきている」などと発言しました。2日後、撤回したとは言え許されない発言、ひどい認識です。
高齢者だけではなく、自営業者や労働者、若者、子ども達、幅広い層で、皆が口をそろえ「庶民の生活、厳しさを分かっているのか!」と怒りを訴えています。
6月11日~13日に共同通信が行った全国電話世論調査によると、値上げについて「非常に打撃・ある程度打撃」と回答した方は77.3%、物価高騰への首相の対応について「評価しない」64.1%、日銀総裁の発言は「適切とは思わない」が77.3%となっています。高知市内で聞く意見とも一致する世論だと実感しています。
市内で活動する子ども食堂や学生達の食材支援の現場で話を伺うと、公園でお水を飲み空腹を我慢している子どもがいるという事、ある子ども食堂では食材支援している世帯中、約半分はひとり親世帯です。その中で相談を受けたシングルマザーの家を訪ねました。
母親は過労の末、すでに身も心も壊しており布団から出てくるのもやっとで家事も十分にできない状況が、すぐ分かりました。子ども達は必然的にヤングケアラー、不登校になっています。
行政や政治は、この様な現実こそ直視し、困っている人を助ける、貧困を無くし戦争はしない社会をつくっていく事、これが日本の政治が果たすべき役割ではないでしょうか。この時に、政府はロシアの起こした侵略戦争に便乗して、敵基地攻撃能力や核抑止論を宣伝し「軍事対軍事」「力対力」の改憲方向に政治の舵を切っています。
5月24日アメリカのバイデン大統領が訪日した時や6月10日、シンガーポールで開かれていたアジア安全保障会議の基調講演で「国内総生産(GDP)比2%」を念頭に「日本の防衛力を5年以内に抜本的に強化し、その裏付けとなる防衛費を“相当な額”増額する」と表明しました。つまり、現状約5兆円の防衛費を約2倍の11兆円規模にするものです。それも短期間で新たに6兆円もの税金をつぎ込むという事です。そうなれば、どこにしわ寄せがくるのか。国民も自治体も戦々恐々です。
戦争の悲惨さを日本が直視せず、軍事拡大や改憲を目指す事は、国内でも貧困と格差をさらに広げることを意味します。

・年金引き下げや物価高騰の中、市民や子ども達が苦しんでいます。市長は軍事費の拡大や改憲を強引に進める政府に怒りを感じないのか、言うべきことはないのか、市長の見解をお聞きします。

② 農政について伺います。日本は長く輸入に依存してきました。

 日本の田畑は外国の様に、平らで広い土地は少なく、外国と比べれば当然、手間もコストもかかります。さらに、現在は不景気と低賃金で国内消費も進まず「米作って、飯食べれず」と市内の農家さんも訴えています。輸入米のために日本のお米が倉庫に積みあがる「コメ余り現象」まで起き、日本の農政はめちゃくちゃです。その原因でもある輸入貿易は、農業を踏み台にして車産業優先の歪んだ貿易の自由化を続けてきました。今も続く、この歪な貿易、市場競争は農家を苦しめ、どんどん農業者を減らし、耕作できない放棄地を増やし続けています。結果、日本の食料自給率はカロリーベースで37%に減ってきました。
 国の財政制度等審議会の資料「令和4年度予算の編成等に関する建議」では、2000年と2020年の比較で基幹的農業従事者数は約240万人から136万人へと100万人近く激減、農業者数に占める65歳以上の割合は約51%から約70%へ激増、耕地面積は約483万ヘクタールから約437万ヘクタールへと約46万ヘクタールも減ってきたことが示され、この先10年後の2030年には農業従事者は76万人へ、今より4割も減り、20年後の2040年には42万人と、現在の7割も減るという状況が試算されています。
 これを高知県、高知市に置き換えれば第一次産業の農業も経済も壊滅的な影響をうけるのは明らかです。農業や水田の多面的機能、役割の大きさを考えれば、基幹産業として支えていく事が国や地方あげて急がれていますが、国はその反省すらなく、R4年度予算で「水田活用直接交付金の見直し」を行うとしました。
 この交付金はそもそも国策によって輸入米の為に国産米の生産を減らす、大規模な減反政策から行われてきた転作への交付金制度です。
問題点を紹介しますが、①今後5年間(2022年~2026年)で一度も水を張らない農地は2027年以降交付の対象としない。②多年生牧草は、種まきから収穫まで行う年は現行通り10アール当たり3万5千円補助ですが収穫のみを行う年は10アール当たり1万円に減額する。③飼料用米などの複数年契約は、22年度から加算措置の対象外にする。④品目を問わず畑化の場合10アール当たり17万5千円の交付金ですが、高収益作物以外とされれば、その他品目となり10万5千円へと減額になります。
JA高知市の方の話では「25年前は田んぼ7~8町歩あれば、ご飯を食べれたけど今は30町歩ないと食べていけない」といいます。(1町歩とは約1万㎡)
 政府が行おうとしている「水田活用交付金」の見直しは、明らかな補助の打ち切りであり、現場の農家の方もJAの方も共通して「はしごを途中で外された思いだ」と訴えています。
 この怒りは全国に広がり、各地方議会からも「水田活用交付金の見直し」の中止を求める意見書が多数採択されています。世論に押され、国は7月末までに対応をしたいと転作に追加補てんをする様ですが、そうであるなら、そもそも交付金のカットは止めるべきではないでしょうか。

・国の水田活用交付金の見直しは、高知市においても、耕作放棄地を増やし、農地を捨てざるをえない事態をつくる事を意味します。これまで取り組んできた農業振興政策に逆行するものと思いますが、本市農業への影響をどう認識されているか。
また、今回の交付金の見直しは国に中止を求めるべきと思いますが、市長の考えと対応をお聞きします。


2、市が行う物価高騰対策について

 国や県の物価高騰対策を見て、重要であるにも関わらず支援が打ち出されていない分野があります。その一つが農業です。県は今回6月議会で燃油高騰対策として園芸と畜産関連の補正予算を決定しましたが農業用肥料への支援はありません。
輸入に頼る化学肥料の値段は大きく高騰しており、R3年5月と11月、R4年2月と3期連続の値上げとなっています。JA中央会のコメントは「最大で95%、ほぼ2倍もの値上がり」だと述べ、JA高知市の方の話は「現時点で20%~50%の値上がりで、今年の秋の改定でさらに上がると思われる」と心配する声があります。
 また、50代の農家の方に直接お聞きすると、現在のハウス資材の単価は、例えばレインペット(ハウスのとい)6メートルで、2014年には1万4,904円、それが2019年に1万6,395円、2022年では2万4,640円に上がっています。肥料のチッソ・尿素の単価は2014年1,854円、2019年1,713円、2022年改定後には3,646円と、特に今年の跳ね上がりは異常です。
 農業に誇りを持ち、大変でもやると決め頑張っている50代の農家の方は、子どもを3人育て、大学まで出してやりたいと必死に働いていました。次世代の農家を潰すような事があってはなりません。この苦境を分析し、支えるのが行政の役割ではないでしょうか。
国が予定する7月末の追加支援は、転作への補てんだと言われており、肥料高騰への支援につながるのかは不透明です。

・国が支援に動かないなら、市が生産者の経営を守る為、農業用肥料等に独自の支援をする時ではないかと思いますが、市長にお聞きします。

3、農林業振興 

① 農林水産省は「みどりの食料システム戦略」を発表しました。
生産者の減少や温暖化、大規模の自然災害を背景に改革が必要という事で、温室効果ガスの削減、環境への配慮、食品ロスなど食品分野や流通産業の改善、森林や漁業での資源保護など、戦略をもって進めようというものです。
2050年までに目指す姿として、いくつかの具体策や目標が示されています。
例えば、低リスク農薬への転換では、ネオニコチノイド系農薬など化学農薬の使用を50%低減する点や、輸入原料や化石燃料を原料とした化学肥料の使用を30%低減する、また、耕地面積に占める有機農業の割合を25%に拡大するなどです。
 この「みどりの戦略」は、小規模や家族経営農業を中心に据える政策になっていないと、専門家からも指摘されていますが、大きな流れとして見れば、地球環境と人にやさしい産業、経済、雇用にしていく為に大事な転換政策だと私は思います。
 その点では、地方自治体がどう受止め、具体化していくのか、これから問われてくると思います。
 高知市をはじめ、圧倒的に小規模農家に日本の食は支えられています。
今回、国が示した「みどりの戦略」は先ほど紹介したとおり、大転換となりますので農業者の理解を得る事はもちろん、減農薬を進めるのであれば、それに代わる土壌改良や新たな負担、変化への配慮も必要となってきます。
家族農業や集落営農を持続発展させていく為にも、高知市版の戦略政策も必要です。
また、農業者だけに頑張れと言うのではなく、市民が消費者として支えていく、出口戦略も必要と思います。
3月市議会では、給食の質を向上させ、農業振興にもつながるオーガニック給食を実施できないかと日本共産党が質問に取り上げ、市長は安定供給に課題がある点に触れながらも「有機農業の確立に向けた研究や検証を進め、モデル的な学校給食への導入を検討する」と重要な答弁を行いました。非常に大事な方向が示されたわけですが、これを本格的に市内全体へ広げる為には、計画的な取組みが必要と思います。

・みどりの食料システム戦略に関連し、市として小規模・家族農業を軸にした有機農業の推進体制と出口戦略を市の次期農業振興計画にどう反映させていくのか、新しい農林水産部長に、本気度も含めお聞きします。

② 次に森林環境譲与税の活用に関連して質問します。

2019年から地方に配分されている森林環境譲与税は十分に活用されているでしょうか。
この税は、山の荒廃や担い手不足に悩む自治体を応援し、森林整備や人材育成、木材の利用、啓発事業に使えるとされていますが、その活用はどうか。
高知県全体の数値ではありますが、2019年と2020年の2年で全国3位の21億円が配分されたのに56%が未使用だったと指摘がされてきましたが、原因は何か、どう変えていくのかが問われています。

・森林環境譲与税活用の範囲をさらに拡大させ、山の荒廃を防ぎ、森林環境整備に関わる人材や雇用を創っていく為に、何をすべきと考えているのか、譲与税の活用状況と合わせて農林水産部長にお聞きします。

また、森林整備と農業振興は連動しており、農業委員会から毎年、高知市には意見書が出されてきました。長年の要望として農業者からは「放置竹林が農地を侵食し農作物などが生育できない問題や、土地の保水力が低下し土砂崩れの要因にもなっており、国と県と市が連携し、放置竹林を再生・活用できるよう伐採ボランテイアの育成や資源の活用をして欲しい」との意見が出されてきました。
この意見書に対し、今年4月に市は回答書を出しました。内容は「竹の伐採、駆除を継続する事と、竹林整備の担い手育成へ県の研修制度を活用してボランテイア団体の技術向上を進め、竹林整備を含め里山林の整備に向けて、他都市を参考に、本市でも導入の検討を行う。また、各地域での情報収集にも努めていく」と回答しています。

・情報収集をはじめ、本気の取り組みを求めるものですが、市の具体的な構想とはどういうものか、お聞きします。また、竹林整備は森林環境整備でもあり、森林環境譲与税が活用できる様にすべきと考えますが、農林水産部長に見解をお聞きします。


4、生活保護行政

 昨年、高知市が行った生活保護廃止処分に対し不服審査請求が県へ出され、6月1日付で市の廃止処分は違法との県の裁決が出ました。当事者が訴えた内容がほぼ認められ、市の不当性、瑕疵が明らかとなりました。
この件について、概要を説明します。当時28歳の知的障害がある男性がR3年4月26日から単身世帯として生活保護を受給していましたが、10月12日無免許運転をしたとして逮捕、拘留されました。市は翌日10月13日付で保護停止の処分を行い、12月23日には住んでいたアパートの大家さんから部屋を引き払う旨の報告があったとして12月24日付で保護廃止の処分を行ったものです。
県が違法だとする理由と根拠については、6月1日付の県の裁決書に、次の様に書かれてあります。
書画カメラ 資料
① 10月12日逮捕・勾留⇒ 10月13日の停止は違法又は不当ではないが、本人に渡すべき停止の通知が翌年、R4年1月13日に入院先の医療機関の担当者に渡されており、生活保護法第26条の主旨に反しており、手続きに瑕疵があると判断するとしました。
② また、市はR3年12月23日付で家が引き払われたとし保護法第19条第1項に該当しないと判断、R3年12月24日に遡って『廃止』処分を行ったが、この時点で本人は拘留中であり、拘留先である高知市に現在地を有していたため『仮に請求人宅に関わる賃貸借契約が解除されていたとしても、同日において、保護法第19条第1項第2号に基づき、管理に属する福祉事務所の所管区域内に現在地を有するものとして、市が保護の実施責任を負うものと解する事ができる。したがって、保護法第19条第1項第2号に反すると判断する、としました。
③ また、保護廃止という不利益処分に際しての説明責任が果たされておらず、これは保護法第26条、第25条第2項にも反するとしました。さらに、12月27日の判決後や入院後の帰来先について、どうなるのか調査した記録もなく、この点は、厚労省通知に反するとしました。

母親は記者会見で「市は話し合いの場でも、訴えても一切聞く耳をもってくれなかった。『保護の必要性はある』とした若手職員の発言もあったが変わることはなかった。職員によって対応が違う、統一してほしい、正しい発言が大事にされる職場にしてほしい」また「市の不当性を認め、調べ関わってくださった方々や県には感謝をしている。今一度、福祉行政全般を見直して欲しい」と述べました。
今回の不服審査請求に関わり、母親を支援してきた県立大学・社会福祉学部の田中きよむ教授も記者会見で「『現在地』に基づく実施義務が認められ、全国の保護行政のあり方を問い直す社会的意義がある、近年にない異例の裁決」と評価し、「居住地がなくても現在地があることで行政側の保護の実施責任がある事を明確に県が指摘した事は大きい」また「ホームレス支援を長年してきたが保護申請に関っては『現在地』への考えが弱く、居住地(住まい・家)がいるということを痛感してきたが、全国的にも生活保護行政を見直す上で重要な決定だ」と意義を述べられました。さらに「本人の利益や権利に即して対応すべきで、単に申し訳なかったでは済まされないし、いまだ福祉事務所からは謝罪も積極的なアクションもない」と指摘しました。県の裁決後の記者会見が7日に行われ、その後やっと連絡が母親に入り、9日、市は廃止処分を取り消す通知を手渡しましたが。

・市が主張、正当化してきた「家を引き払えば保護の「廃止」は妥当である」とする運用が「違法」とした今回の県の裁決理由についての受け止めと、母親及び専門家の記者会見での意見、指摘を市長はどのように受け止め、今後、高知市の福祉行政をどう見直していくのか、市長にお聞きします。

・今回の違法な廃止処分によって発生した医療費などの負担はどうなるのか。16日、市は負担の解消については母親に説明を行いました。精算する事は了承されたわけですが、結果として、家族は不当な廃止によって金銭的な工面など多大な苦労、負担を受けました。
この件が及ぼした影響の重さをしっかり受け止めた対応をして頂きたいと、強く指摘しておきます。

生活保護法では居住地が無かったり、明らかでなかったりしても区域内に現在地を置いている場合は保護受給の対象としています。
この点は2月4日、不服審査請求をする前の母親が求めた話し合いの場でも指摘し、説明と改善を求めましたが、それでも市は『生活保護法の第26条は関係ない、第19条第1項に該当しないから、今回の処分は法的に問題ない、組織的な判断で正しい』『上司に相談する必要もない』『不服審査請求も、どうぞしてください』と終始、発言していました。

・つまり、市は今回の判断を過去から正しいとしてきたわけですが、この判断はいつから続けてきたのか。また、行政処分を扱うチェック体制に問題はなかったのか、今後の是正内容について、健康福祉部長にお聞きします。
 


5、教育行政 
 
今の10代20代が生まれ育ってきた時代は本当にきびしく、希望を見出しにくい時代だと思います。収束の見えないコロナ災害や戦争だけでなく、20年以上、実質賃金は上がらず、非正規労働は増え、格差と貧困は拡大を続けています。
文科省が発表した資料では、令和2年度にコロナを理由に大学を中退した者が385人、休学は2,677人、令和3年度は中退者701人、休学が4,418人と、ほぼ2倍になっています。小中高生にとって、身近な大学生たちが、学びも生活も成り立たなくなっている姿や身近な大人が食費を削り、生活費や学費の貸し付けに追われ苦しむ姿を見て、どう感じているでしょうか。

困難を抱えた子ども達の状況を示す一つである、少年補導センターの資料を見てみました。令和3年度の活動報告と統計資料からは大きな変化、心配する実態が浮き彫りとなります。コロナ前の2019年の街頭補導件数は93人、2020年は95人、2021年は185人です。
コロナの前から2倍になっています。その特徴は、不登校予備軍と言われる『エスケープ』や犯罪に巻き込まれる可能性がある『家出』が大きく増えています。
少年補導センター長は「街頭補導件数が2倍になった、集団化するケースが増え、補導も増えた」と話します。また、少年補導の現場で日々子ども達の話を聴いてきた高知県警の少年課の方にも伺うと「目標を見失って気力がない子が増えている」と言います。この視点、指摘は非常に重要だと思います。単に、コロナで学校や部活動がなく、行き場を無くす子ども達が集まって補導されたという話ではないという事です。生きる意欲、チャレンジする元気を失う子ども達が増えている、これは10代の自殺が全国的に増加の傾向にある点にも繋がるのではないかと感じています。
原因は何なのか、どう支えていく事が必要なのか、行政にも地域にも突きつけられている社会問題だと私は思います。

 ・補導件数が増える中で浮き彫りとなった、エスケープや家出の増加という状況は、子ども達が犯罪の被害者や加害者にもなっていく可能性を高めていると思います。この様な背景への認識と支援策の必要性について、教育長にお聞きします。

 

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